「今までの歩み」  匿 名

1.はじめに

 家内をエホバの証人から脱会させるための取り組みを行って、早や10年目に入ります。その間いろいろなことを試みました。教会に行き、聖書通読をし、多くのエホバの証人に関する本を読み、そして、エホバの証人の研究生となって学びを行うこともしましたが、何れも効果がなく時間ばかりが過ぎていきました。最近は、このまま自分の人生が終わったとしたら、自分の人生ってなんだったのだろうと、きっと後悔すると思います。この様な悩みをもっておられる方が沢山おられると思いますので、私の経験から、これからの取り組み方を考えていただいて、少しでもいい方向に進むことを願って、私の経験を記しました。

2.妻の入信

   家内とは平成2年の6月に恋愛結婚をしました。しかし、結婚前には二人で結婚することを確認しあって、お互いの両親に挨拶を行った後に、家内の両親から結婚に対して猛反対があり、一度は諦めかけたのですが、私の姉が中に入ってくれて、なんとか結婚をすることが出来ました。この様な状況で結ばれた二人だったため、他の夫婦よりも二人力を合わせて幸せな人生を歩んでいくはずだったのですが、長女が生まれて暫くして、家内がエホバの証人の訪問を受けました。訪問を受けた頃は、家内は子供をどのように育てていいのか思案していたところだったことで、子育ての方法からやがて聖書の学びに入っていきました。最初は家内から友達が出来たと聞かされていて、それは良かったと思っていましたが、そのうちに家内の言うことがおかしいと感じ、何をしているのかと問いただしたところ、宗教の学びをしていることを聞かされました。私は元々無宗教であるとともに、宗教戦争や宗教グループによる集団自殺等を聞いていたので、宗教は人間を変えてしまうもので、恐ろしいものという認識をもっていました。そして家内には即座に宗教を止めるようにと言って、家内の司会者にも電話をして、家庭が壊れるから宗教の学びはしないで欲しいと伝えましたが、こちらの思いは関係ないような話振りで、私が仕事に行って留守をしている時間を利用して、学びがどんどん進んでいき、やがては子供を連れて集会にも行くようになりました。子供は連れて行くなと言っても、エホバの証人の学びをさせればいい子になると、こちらの言うことに聞く耳もたずの状態でした。その家内の司会者が一度自宅を訪れてきたことがありましたが、その時にその司会者を脅してでも、家内をエホバの証人から離すことをしていれば良かったと、今でも後悔をしています。
   結婚した当初は会社の社宅に住んでいましたが、約2年経ってから自宅を購入し引越しすることになりました。引越しした理由は、家内をエホバの証人から離すということも含んでいました。引越しをして、やっとこれで宗教から逃れることが出来たと安心したのですが、ある日家内からエホバの証人の学びをしていることを打ち明けられました。エホバの証人の長老の家が自宅の斜め向かいあったのです。この時には、もうどうしようもないという気持ちになりました。

3、家内をエホバの証人から脱会させるための取り組み

   家内がエホバの証人との学びを始めたのが、結婚して1年半くらい経ってからだと思いますが、それから今日まで結婚生活のほとんどの期間を家内とは心を通わせることが無かったように思います。この間、何度も離婚をすることを考え、家内にも離婚をすると言ったこともありましたが、子供のことを考えると離婚はしない方がいいと考え直し、形だけの夫婦を続けていました。ある日のことです。近所に私と家内と共通の友人(女性)がいるのですが、その人が紙袋をもって自宅に来ました。事情を聞くと、家内からエホバの証人の学びを進められたのですが、教えの内容になじめなかったのか、冊子類を返し来られました。その女性は、小さかった子供を事故で亡くされていて、家内としては良かれと思って、その友人にエホバの証人の学びを勧めたのでしょうけど、私にとっては、友人の家庭まで壊すつもりなのかと大喧嘩になりました。その時に家内が私に言った言葉が、『何も知らないで反対ばかりして、反対するのならちゃんと調べてからにして』でした。私はそれを受けて、じゃ徹底的に調べてやると言って、その場は終わったのですが、しかし、今まで宗教に接した経験も無く、また周りにも宗教に携わった知人も居なかったため、何をどうしたらいいのか皆目見当がつきませんでした。しかし、ある日、業務中に会社のパソコンのインターネットで何気なくエホバの証人で検索すると、それに関連するサイトがズラズラと出てきて、暗中模索の私にとっては感動ものでした。それから休日に会社に出てきては、いろいろと情報を得ることをしました。その時に、林さんの引き裂かれた家族の本の紹介があり、一般の本屋でその本を購入し、そして神戸にエホバの証人の対策をしているA牧師がいるということを知ることが出来ました。最初は牧師イコール宗教ということで、連絡することを躊躇していましたが、この人しかいないと思い、連絡を取り、会って話しを聞いていただきました。それが2000年の3月のことでした。それからA先生とのつながりが始まり、今日まで続いています。A先生と最初に会った時に、次の日曜日から教会に来て下さいと言われ、何で教会に行かないといけないの?と思い、そして次には自分の聖書をもちましょうと言われ、これはまぁいいかと思いキリスト教書店で聖書を購入し、さらに次には、聖書を読みましょうと言われた時には、内心私を信者にするつもりかと思いましたが、言われた通りにそれから聖書通読を始めました。そして、A先生と会って1年くらいしてから、ものみの塔の学びをする機会が得られました。自宅で聖書研究をすることになって、私は家内にもその研究に同席させ、その司会者に質問攻めをすることによって、司会者が答えられなくなった時に、家内に何かおかしいという思いを起こさせようと目論んでいましたが、空回りばかりで時間だけが過ぎていきました。やがて家内も私の質問攻めに嫌気が指したようで、その学びの席から離れていき、そして研究も終わり集会に出席するようにと誘われて、日曜日の集会に行くようになりました。家族4人が集会に出席していて一見神権家族のようでした。大会にも参加して、それらの集会で話される内容から何かを掴もうと、いつもノートを取っていました。そうこうしている内に、長女が小学校6年生になってから集会に行かなくなりました。私としては、子供がこのまま集会に行き続けてエホバの証人になるのだけは避けたいという思いだったので、ホッとした気持ちになりましたが、もう一人次女が残っていたので、続けて集会に行っていました。しかし、ふと長女のことを考えた時に、日曜日の午前中はいつも一人で留守番させていることに気がついて、一番大切なことを忘れているように思い、長女が集会に行かなくなって3年くらい経ってからだったと思いますが、私も集会に行くのを止めました。そして、それから2年くらいしてから次女も集会に行くのを止めました。そのことで私は何か心が休まる思いがしました。それまでは、子供がエホバの証人になる前に家内に間違いを気づかせないといけないという焦りがありましたが、これで家内だけに集中して取り組みが出来るという思いになりました。しかし、家内と私の関係は益々悪くなっていき、普通の話もしない顔もまともに見ない状態になりました。

4.子供のこと

子供のことに少し触れたいと思います。先に述べたように私には二人の娘がいます。長女と次女とは四つ違いです。二人とも物心がつく前から集会に連れていかれていました。長女が三つぐらいの時だったと思いますが、家内が長女を集会に連れて行こうとしていた時に、娘にお父さんと一緒に居ようと言ったのですが、その時、娘は目に涙をいっぱい溜めながら、お母さんと行くと言いました。この時は、本当にショックを受け、お母さんと行くと言った娘に対して嫌悪感をもったように思います。その長女は小学校4年の2学期から不登校になりました。原因は今も判りません。その時私は、これはエホバの証人の集会に連れて行った影響だと考え家内を責めました。そして学校は行かないけど集会には行くという生活がしばらく続きましたが、やがて12歳の夏ぐらいになって集会にも行かなくなりました。中学進学の時期になって気分が変わったせいなのか、中学校に行くことになり、クラブ活動も吹奏楽部に入っていましたが、それも1学期までしか続かず、また不登校に逆戻りになりました。その時には、無念という思いがありましたが、娘にプレッシャーだけは掛けまいという思いで、そっとしておくことに努めました。そのまま15歳の秋まで不登校が続きましたが、長女もこのままではダメと思ったのか、家庭教師を付けて欲しいと言い、それから勉強を続けて、やがて高校を受験すると聞いたときには、本当に嬉しかったです。今でもそのことを思い出すと涙が出てきます。長女が高校に合格し、学校に通うことが出来て、これで一安心と思っていた矢先に、今度は次女の不登校が始まりました。小学校6年の1学期終了間近でした。この時にも、心の中では何故なの?という思いになりましたが、長女の時の経験からか冷静に対処することが出来たように思います。結局、次女は小学校6年の3学期から学校に戻ることができ、今では中学生となって吹奏楽部に入って頑張っています。長女が不登校になった時には、エホバの証人の学びをさせていたことが原因と思いましたが、しかし、次女が不登校になった頃には、これらの原因は夫婦仲がうまくいっていないからだという思いに変わりました。子供たちのためにと離婚をしなかったのが、それが返ってものすごい悪影響を子供たちに与えてしまったと思います。子供たちのためにと離婚をしないのなら、子供たちの前では仮面夫婦を演じ続けなければならず、それが出来なければ、離婚をした方が結果的に子供たちにはいいのではないかと思います。私たち夫婦の問題で子供たちには多大な影響を与えてしまって、本当に申し訳なく思っています。

5.今後のこと

今まで一生懸命に家内をものみの塔から脱会させるために取組んできましたが、何ひとつ効果が出せていません。幸いにも子供たちが組織から離れてくれたのだけが救いです。今の生活をこのまま続けていくか、あるいはもう家内とは終わりにするかについては、私の心の中では、もう終わりにしたい方向に気持ちが大きく傾いてしまっています。エホバの証人の家族の集まりとかでは、よく救出するのには愛が必要と説かれますが、私はそのことを嫌いな食べ物に譬えて、『嫌いな食べ物があったとして、その食べ物を無理して食べることはできるかもしれないが、それを好きになることは出来ない』というように思っています。私には無くなった愛は、もう戻ってくることはないと思っています。そいうことで、これからは家内とは自然体で臨み、状況をみて決断を下したいと考えていますが、今までやってきた事が、少しでも他の皆さんに助けになるようなことであれば、出来る限りお手伝いをしていきたいと考えています。また、エホバの証人問題をどこに相談していいのか判らず、一人で思い悩んでいる方が沢山おられると思いますので、その人たちと対策に携わっておられる先生方、あるいは家族の会とかのグループへの橋渡しができたらいいと思っています。そのためにも、これからも学びを続けていくとともに、皆さんとも繋がっていきたいと考えています。

    

ヨハネ15:5  わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である。人がわたしにつながっており、わたしもその人につながっていれば、その人は豊かに実を結ぶ。わたしを離れては、あなたがたは何もできないからである。