「10年目の夏に 」   匿名 




 エホバの証人をやめて10年目の夏、東北で行なわれた移動教室に1泊であったが参加することができた。東北の元JW、牧師、クリスチャンの方々また各地から参加された皆さんと交わり、主を賛美できたことは大きな喜びであり恵みであった。この集まりで一番心に残ったのは、ご主人が酒田出身で、今は神奈川在住のご夫妻のお証しであった。長い間JWの訪問を受け『研究生』となり、昨年の地域大会に出席して感動しJWになる決意をされたご主人と、「輸血拒否」などで明らかにおかしい宗教に入ろうとしている夫に苦悩された奥様の心の葛藤。懸命な奥様の働きかけによって早い段階で間違いに気づかれたことは本当に良かったと思う。今はご夫妻で教会の礼拝に出席されているとのこと。主の導きを感じすばらしいお証しであった。そして私は、聞きながら立場は逆であるが、以前の自分たち夫婦の姿と重ね、夫の言葉を思い出していた。

『ボクの13年間を返してくれ!』

新婚まもなく夫の了解なく「研究」を始め、知られた後も耳を貸さず、13年間ものみの塔の教えを第一にした私。家庭は「幸せ・・・」どころかすっかり暗い場所となっていた。JWをやめた後、そんな私を一度も責めることはなく、人前で自分の気持ちを話す機会もなかった。唯一、時おりおどけた口調でこういっていたのだ。心労によってやせてしまったという奥様が、涙ながらに語られている様子を見て、夫の13年間の心の叫びを聞いた思いであった。今更ながら自分の愚かさと夫の忍耐を思い知らされた。イエス様はこんな私達を見ておられ、救ってくださったのだ。ハレルヤ!

翌日の夕刻、帰りの飛行機の窓から実に美しい雄大な鳥海山が見えた。酒田での恵まれたよき思い出と共に今もはっきりと記憶している。


主は人の一歩一歩を定め御旨にかなう道を備えてくださる 詩篇37:23